海士の力

~ 海士パワー座談会 ~

平成29年9月11日(月)

座談会では、再生可能エネルギーで海士町のまちづくりへの貢献をめざす島ベンチャー・海士パワーの太陽発電事業の取組について、関係する皆さんのお話を伺いました。

海士町の"自立に向けた取り組み"とこれからの"挑戦"について山内町長から、また、川神支店長からは地域の金融機関としての資金面での応援について、お話をいただきました。

お二人からは、新たに海士町で事業の基盤づくりをめざす株式会社海士パワーの挑戦に対し、海士町として歓迎と期待の応援のメッセージをいただきました。

海士パワーの紹介と海士町における太陽光発電設備の整備計画について

はじめに、株式会社海士パワーの山本社長から、海士パワーの設立に至った経緯や目的について、以下のような報告がありました。
山本
もともと自分は、長野県でまちづくりに関連した事業を営んでいるが、縁あって2007年7月10日に海士町に初上陸し、それから足掛け10年間、海士町での情報ネットワークの構築や情報発信などの事業で産業活性化のお手伝いをさせて頂きました。これまでの事業を通じて、海士町のチャレンジ精神と、多くの"そとの人"を受け入れ、"やる気"にさせる風土は、なんとも心地よく、海士町のまちづくりに貢献したいと考え、それを具現化したのが株式会社海士パワーの設立です。

具体的な事業としては、海士町での再生可能エネルギーの普及と"エネルギーの自立"をめざして、太陽光発電、小型風力の電気、バイオマスの熱供給をはじめとする地域活性化の支援があります。

続いて、山本社長から、島根県の「再エネによる地域活性化支援事業(地域貢献枠)」の採択を受け、海士町で200kWの太陽光発電設備の整備を計画することにしたと、以下のような計画の内容説明がありました。
山本
本事業は、いくつかの工夫をしています。
第1が、固定価格買取制度(FIT)を活用し電力会社に売電をします。太陽光発電は買取価格が下がっていますが、まちづくりからみれば、20年間の持続的な事業で経営の基盤となります。

第2が、島根県の「再エネによる地域活性化支援事業(地域貢献枠)」の採択を受け、プライムレート相当の利子分について、助成してもらう仕組みです。また、地域貢献枠ということで、海士町のNPO等への寄付を20年間行うことができます。

第3が、資金調達に、経済産業省が進めるベンチャー向け支援制度の「エンジェル税制」を活用することにしていますが、島根県内では初めての事業となります。

エンジェル税制での出資は、1口3万円の小口出資にして、多くの方々の出資を頂くこととなり、出資者には税制優遇があることは、「ふるさと納税」に似ていますが、出資ですので配当が受けられ、今回は、それを海士町の産品等の購入に使える商品券として、20年間配当できればと考えています。つまり、20年間の海士のまちづくりの株主であり、20年間、海士町とお付き合い頂ければと思います。

第4が、地域金融となる山陰合同銀行さんです。小口の資金を幅広く集める方式(クラウドファンディング)のため、本事業の主旨や地域貢献スキームを多くの出資者の方に理解してもらうことが重要です。そのため、山陰合同銀行さんからも、資金の一部をお借りすることで、金融機関のノウハウを活用した財務面でのコンプライアンスの確保のしくみも取り入れることにしています。

第5となるのが、太陽光発電設備の維持管理です。改正FIT法では適切な保守が義務付けられました。設置工事から、地元工事業者さんを活用することにより、地域に資金が還流するとともに、維持管理要員として雇用が発生します。

小口出資の募集は、これまでの海士町の様々な取組みや人的な交流の成果を海士町の魅力として発信・活用することで、多くの方の賛同を得て実施していきたいと考えています。

「自立・挑戦・交流」を町政の経営指針に掲げ、自立経営をめざす町、海士町

全国的にまちづくりのモデルとして評価が高い海士町の、今日に至る自立に向けた取り組みについて、山内町長からお話を伺いました。
山内
一時は、「財政再建団体」への転落という危機が予測されたが、自分たちの町は自分たちで守るという職員の意気込みが町民にも伝わり、「平成の大合併」の中でも、覚悟の「合併しない宣言」を行いました。財政再建にあたっては、町政に経営の視点を取り入れ、三役はもとより、課長職や一般職も大幅な給与カットに自主的に協力し、まさしく身を切る取り組みで赤字財政を乗り越えました。また、町民も自主的にゲートボールやバス代等の補助金を返上するなど、行政と町民の絆が出来上がってきました。そうした努力の結果、毎年2億円もの資金が手元に残り、その資金を活用して様々な挑戦的な事業を生み出してきました。

今日まで「ないものはない」の精神で住民と行政が一体となって、島の自立に向け多くの挑戦を続けて参りました。その姿勢が魅力となり、多くの交流と更なる挑戦を生み出して来ました。一時は廃校の危機にあった島前高校を魅力ある高校へと進化させるために公立の学習塾をつくり、今では全国25都府県から意欲ある生徒が集まり、注目されるようになりました。そのほか、先進的な取り組みはたくさんありますが、基本的な考え方は、補助金による一時的な「楽」ではなく、稼ぐ力を生み出すしくみづくりこそが重要である、ということにあります。そのための専門部署として、「地産地商課」を設置して、稼ぐためのしくみづくりを行っています。

また、町外からのIターン者はこれまで500人を超えています。町としては、海士町で何かをやりたいと「本気」で考える人には、「本気」で応援する姿勢が人づてに伝わって、Iターン者は増え続けています。Iターン者の若いエネルギーや専門スキルをもった有能な人材が海士町の大きな活力となっています。

地域の経済的自立には、エネルギーの自立が重要

山本社長から、海士町にあるエネルギー資源の活用による経済的な自立の在り方について、以下のような提案がありました。
山本
海士町は、豊かな海と自然に恵まれ、湧水もあることからお米(海士町ブランド本氣米)も収穫でき、加工食品等を除けば、食料自給率はほぼ100%になっていますが、電力をはじめ、石油、プロパンガスといったエネルギーは、島外に依存せざるを得ない状況です。特に、海士町を一躍有名にした急速冷凍システムCASや、福祉施設はエネルギーの大飯喰らいの代表です。

町外に出ていくエネルギーのお金を減らし、経済活動を下支えするためにエネルギーの地産地消が重要なテーマと考えます。まず、町にある資源の有効活用として、屋根設置の太陽光発電があります。海士町は、日本海側気候に属していますが、本土と違い冬場に雲がかかることが少ないようで、今年の発電量実績も当初想定したものの20%増しの数字となっており、こちらも驚いています。

海士町は、住居地区が14地区ありますが、島がリアス式の地形で、その海に面した場所に住民が暮らしており、災害時には孤立する可能性があります。そのため、14地区に再エネ発電設備を設置し、エネルギーの防災対策と地産地消化を進めます。これは、海士町での経済循環を生み出し、町の産業振興などに活用でき、海士町を"住み続けることができる島"、つまり、持続可能性の高い島にするしくみづくりに役立てることができます。

まちづくりにおける地方銀行の役割について

国の重要施策である「地方創生事業」の中で、地域での資金循環の活性化として、地域のベンチャー企業や先進的な中小企業の取り組みに対し地方銀行の果たす役割への期待が大きくなっています。
山本
今回、山陰合同銀行から設立から日の浅いベンチャー企業である海士パワーに対し、太陽光発電設備に係る資金の一部について、資金供与に協力していただける運びとなっています。こうした地方銀行によるリスクをとった資金提供が、地域経済の活性化につながると期待されます。

また、本事業では、資金調達に市民ファンドによる小口資金と銀行借入とを併用することにしています。銀行からの借入では、銀行の貸出先管理のノウハウを活用して、資金管理のガバナンスを確保することが、市民ファンドを活用した事業として重要なしくみとなると考えられます。

まとめに代えて

海士町では、これまでも「自立・挑戦・交流」の町政経営指針のもとで、行政と町民とが一体となった共創のまちづくりが多方面で行われています。今回の事業による「地産地消のエネルギーによるまちづくり」が、海士町の新たな自立に向けた挑戦となると期待されます。

町内外の多くの方々の賛同を得て、本事業の円滑なテイクオフを目指したいと考えています。

今回は、業務のお忙しいなかお集まりいただき、貴重なご意見等を賜り厚く御礼申し上げます。